最適な弦の選び方

弦はレースカーのタイヤのようなものだと言えます。タイヤは、路面の状況に基づいて選択する必要があり、誤った選択は、車の基本性能に関わらず、パフォーマンスを下げてしまいます。これは、楽器と弦の関係と非常によく似ています。弦は、演奏者が目指している音に基づいて選択する必要があります。このことを考えると、弦と楽器の適切なペアリング方法についてもっと広く知られていても良いように思えます。いくら楽器が素晴らしくても、弦の選択が悪いと、あまり良い音が出せないことになるのです。

弦楽器奏者によっては、何となく最新の人気の弦のブランドを、あまり深く考えずに使用する場合が見られます。特に、近年は高張力の化繊製の弦の方向に流行が向かっています。このタイプの弦は、新しくて厚めの板を残した重めの楽器や、音量最優先の奏者には適していますが、通常、このタイプの弦は音量は大きくても音質が犠牲になる傾向があります。また、古い楽器の場合には、高張力の弦は音を詰まらせることになる傾向が見られます。現代の高張力弦は比較的新しいコンセプトであり、古い弦楽器が制作された頃には低張力弦以外存在しなかったことを再認識すべきと考えます。

私の場合、長年ドミナントを使用していました。この弦は、化繊製の弦のはしりであり、化繊の弦の中で最もガット弦に近い音を出すと言われてきました。その他にも多くの新しい弦を試してきましたが、他の多くの奏者と同じように、いつもこのブランドに戻ってました。

このように試した弦の中で特筆すべきものとして、Pirastro ObligatoとEvah Pirazzi Goldが挙げられます。経験上、Pirastro Obligatoは特にビオラにおいてガット弦に近い音質が得られ、良い結果が得られました。しかし、問題はその劣化の早さ。その寿命はとても短く、使用開始後数週間で音質が低下するように感じました。

Evah Pirazzi Goldは、通常より少し重厚な作りの現代楽器の場合にとても良い結果が出せると感じます。重厚な楽器の場合、低張力弦だと鳴らしきるパワーが不足してしまうのです。また、Goldでない通常のEvah Pirazziよりも耐久性があり長く使用できます。

古い楽器や繊細な楽器の場合、私は近年Pirastro Passioneをよく使用しています。この弦はガット弦でありながら、化繊の弦の特徴である安定性も(ある程度)備えており、どのような楽器でも素晴らしい音質が得られます。あなたがソリストではなく、主に室内楽やオーケストラで演奏するのであれば、化繊製の弦では得られない暖かい音質で幅広い音色を出すことができます。一方、大きなコンサートホールの後ろまで音を届かせる必要があり、健康状態の良い楽器をお持ちのソリストであれば、上記のEvah Pirazzi Goldのような高張力弦は試す価値があると思います。音質や音色の幅広さは犠牲になっても、音量が優先され、遠くまで聞こえる音を出せるようになることでしょう。